製図用文鎮

「製図用文鎮」、この正式名称すら知りませんでした。学生時代には、あちこちの研究室やアトリエに必ずと言っていいほどあったものです。手垢なのか鉛筆やパステルの粉なのか、たいがい黒っぽくすすけていました。会社にもあったと思いますが、いつの間にか見なくなってしまいました。

デジタル化でトレペに図面を手描きしなくなり、青焼きもなくなり、丸めたトレペや図面を広げることもなくなったからでしょうか。電機メーカーから大学に戻って、無性に恋しくなりました。そこで、ネットで調べたところ「製図用文鎮」が、まだあるではありませんか。早速に、大小サイズをいくつか取り寄せました。

カレンダーや丸まった資料を伸ばす時、紙を重ねて切ったり接着する時や窓を開けて心地よい風を感じたい時の書類の重しとして、便利に使わせていただいています。今ではスウェード調人造皮革のようですが、元々は、紙の表面を痛めない柔らかなセーム皮を使っていたことでしょう。その柔らかな感触で、冷たさを感じさせずに包む金属の重さの意外性が使い続けたい道具への愛着を産んでくれている気がします。研究室のテーブルに出しておくと、やって来た学生に不思議がられる、研究室の良いお供になっています。

丸型 合金製・小:φ48mm×29mm×350g、大:φ88mm×25mm×940g

安齋 利典 , 2020.04 , vol.159

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