研究イベント「文明評論家・川添登—その足跡と人物像をかたる」ほか(6月21日開催)
6月21日(土)、道具学会の定時総会に併せて「道具学研究イベント」を二部構成で開催いたします。
〈Part 1〉では、「文明評論家・川添登ーその足跡と人物像をかたる」と題しての研究レクチャー。〈Part 2〉では、毎年好評の「『道具学論集』執筆者によるQ&A会」が行われます。また夕刻からは〈交流会〉を予定しています。研究イベント及び交流会は一般(非会員)のかたもご参加いただけます。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
研究イベント〈Part 1〉
「文明評論家・川添登 —その足跡と人物像をかたる」

道具学会の設立に貢献された川添登氏は、道具を文明や文化の表象としてとらえる思想的枠組みを提示し、学会の理念形成に大きく寄与されました。今回のレクチャーでは、2名の若き川添登研究者・信奉者からお話を伺います。川添氏を建築評論の枠を超えた文明批評・文化論の視座から研究する「木原天彦氏/松濤美術館」と、川添氏のメタボリズム運動を取材しその思想と人物を信奉する「磯部孝文氏/GK設計」のお二人です。会場を含めた討議のモデレータには、学会設立当時の川添氏を知る、面矢慎介 当会副会長が担当します。没後10年となるこの節目の年に、川添氏の功績を偲び、その精神を再確認する貴重なレクチャーです。
講演者1 木原天彦(きはらあまひこ)渋谷区松濤美術館 学芸員
講演者2 磯部孝文(いそべたかふみ)株式会社GK設計 シニアディレクター
モデレータ 面矢慎介(おもやしんすけ)滋賀県立大学名誉教授 道具学会副会長

川添 登(1927‒2015)
建築評論を基盤にしながら、都市、芸術、道具、デザインを通じて文明の本質を読み解いた知識人。戦後日本におけるモダニズムや近代化に批評的視点を持ち、生活文化や空間の意味を文明論的観点から論じた。道具学会の創設にも関与し、人間とモノの関係性を通して文明の構造を考察。建築を超えた多分野にわたり、多くの人々に思想的影響を 与えた稀有な評論家である。
講演者からのメッセージ・略歴
木原天彦:文明論之概略 —— 川添登の場合
川添登(1926-2015)は戦後日本において極めて独自な活動を繰り広げた評論家です。児童教育、建築、芸術、都市、民俗学、生活学とフィールドをめまぐるしく横断し、常に文明論的な視野から人々の生活について考え、そのゆく先を見据えるダイナミックな議論を展開しました。菊竹清訓や粟津潔、榮久庵憲司など数々のデザイナーと協働して、理論と実践を架橋したこともまた、特筆されます。今回の発表ではいくつかの彼の著作や実践をもとに、川添登の「領域横断性」と「文明観」を紹介しつつ、彼がデザインに託した思いを読み解きます。現代において「文明」を語ることはどこか後ろめたく、ともすれば深刻な差別意識を生み出すか、怪しげな誇大妄想に陥る危険性すらも含んでおり、とても厄介なものです。そこでこの発表では、「文明」を自明な存在と捉えることは避け、むしろ「文明」を語ることで川添は何を成し遂げようとしたのか?それは日本の「戦後」といかに共振していたのか?という問いを掲げ、歴史学的に考えることを目標とします。

きはらあまひこ
1992年東京生まれ。東京藝術大学美術研究科博士後期課程。2019年より渋谷区立松濤美術館学芸員。専門は日本近現代美術史、とくに前衛芸術・建築と生活文化との相互浸透について関心を寄せ、今和次郎や白井晟一、川添登についての調査研究に取り組んでいる。川添に関する主な論考に「川添登の白井晟一論とその背景1950年代における建築家の主体性の確立」(『白井晟一入門』青幻舎、2021年)、および「川添登研究の方法的課題」(『渋谷区立松濤美術館年報26号/紀要1号』渋谷区立松濤美術館、2024年)がある。
磯部孝文:「METABOLISM Report ~ヒアリングによる時代の記録~」から
昨年、川添登先生のご子息より、先生が当時仕事場で愛用されていた「イタリア製の木製の大きなデスク」と「イームズの黒い革張りの椅子」をいただくことになった。その不思議なご縁に、私は歓喜した。遡ること約23年前、22歳の大学生だった私は、ある興味から卒業論文で川添登氏が中心となって結成したメタボリズムグループを題材とし、55歳差の先生に学生特権で無謀にも仕事場に押しかけヒアリングを敢行した。ファーストコンタクトは最悪だった。「君はメタボリズムの何を知っているのかね。」先生はお会いするなりイライラした口調でこう言われ、まだ何者でもない私に強烈な一撃を喰らわせた。
その後、今になりなぜ私のところに机がくることに至ったか…… 今回は、その後も何度かお会いすることになった “祖父と孫”のような出来事を振り返り、メタボリズムのこと、川添登先生がどういう人物であったか、直接お会いした経験をもとにお話ししたいと思います。

いそべたかふみ
1980年名古屋市生まれ。滋賀県立大学環境科学部環境建築デザイン学科卒業、滋賀県立大学院博士前期課程修了後、2005年に株式会社GK設計東京事務所に入社。 卒業論文で『メタボリズムグループ』を研究対象とし、川添登氏を含む当時メンバーの多くに直接ヒアリングをした「METABOLISM Report」をまとめる。 修士論文では『道具論』を研究対象とする。現在は、パブリックデザインに関わる仕事を生業とし、「動く」ストリートファニチャーのデザインを生きがいとする。GK設計 関西事務所勤務シニアディレクター、大阪事務所所長兼務。
モデレータ
面矢慎介(おもやしんすけ)
1954年生まれ。千葉大学学術博士。Royal College of Art(英国)修士、GKインダストリアルデザイン研究所、GK道具学研究所を経て、滋賀県立大学名誉教授。 1996年榮久庵憲司、川添登、山口昌伴らとともに道具学会を設立。現在道具学会副会長。
〔本研究レクチャーの開催について〕
今年2月、道具学研究発表フォーラムを「都市広島と道具学 —– 道具学提唱者榮久庵憲司の跡をたどる」をテーマに、榮久庵氏の発意の地、広島(広島市立大学)で開催いたしました。被爆80年を迎えるグランド・ゼロの地で、学会員や関係者の多くが集まり、これからの時代にとって「道具学の重要性」を再認識する機会を得ることができました。そして今回の「研究イベント〈Part 1〉」では、榮久庵氏とともに道具学会の設立に大きくかかわった「川添登氏」に焦点を当て研究レクチャーを開催いたします。両者ともに没後10年となる大きな節目の年です。道具学会設立へのお二人の貢献と功績を偲び、道具をめぐる多彩な知の交流の場として、本レクチャーがその精神を継承する機会となれば幸いです。ぜひ、初夏の世田谷美術館にみなさま足をお運びください。
研究委員会委員長 山田晃三
研究イベント〈Part 2〉
2024 年度『道具学論集』執筆者との質疑応答(Q&A)会
毎年春に発行される『道具学論集』は、どうしても執筆者の側からの〈一方向〉での発信にとどまってしまいます。そこで、2020 年度より、直近の『道具学論集』の投稿者と読者との間で、掲載論文の内容について質疑応答を交わし、意見や感想を述べあえるような、〈双方向〉で自由に談論・情報交換できる場を設けています。『道具学論集』を軸として、ざっくばらんに道具をめぐって皆で語り合うユニークな試みとして、例年参加者の皆さんから好評を得ているイベントです。当日の会場では、参考資料として論集を配布いたしますので一般の方も是非お気軽にご参加ください。
Part2の司会進行は、石川義宗理事・研究委員長が担当します。
2024 年度『道具学論集』執筆者一覧
審査付論文 | 丸谷博男「現代における「数寄屋建築」の価値と日本の住宅の行方」 (*) |
小論文 | 入江康仁「鎌倉市寺院における銅板葺冠木門の形式と意匠的特徴に関する研究」 川添歩 「道具としてのコンピュータ−道具学的観点の考察」 (*) |
一般論文 | 面矢慎介「英国道具博物館見学記」 (*) 唐澤龍児「乗り物における椅子なる道具の考察」 (*) 黒田智子「利水の連鎖—西宮市鳴尾地区における井戸の役割の変化と背景」(*) 野田尚稔「榮久庵憲司の『道具論』を再読する(第5回)」(*) 蓮見孝+望月雅之「道具学会によるまちづくり支援の試み—茨城県境町と萩原酒造を対象として—」彌中敏和「道具をなすもの—広島の経験から」(*) |
作品発表 | 高梨廣孝「YAMAHA SRX をつくる」 (*) |
会の進行方法
はじめに各執筆者の皆さんから論文の内容を簡単にご説明いただき、その後、〈リアル会場参加者 → オンライン参加者〉の順で質問を受け付けます。オンライン参加者からの質問は、Zoom のチャット機能 (または挙手機能&マイクオン) にて受け付けます。
研究イベント概要
■日時 2025年6月21日(土)
■形式:リアル会場での対面形式+Zoomミーティングによる配信
■リアル会場:世田谷美術館 講堂
■交流会会場:くいもの屋つう用賀店 東京都世田谷区用賀 2-38-14 青木ビル 4F(「用賀駅」東口徒歩 1 分)
■参加費(研究イベント1・2):無料
■参加費(交流会):5,000円 (学生会員は4,000円、いずれも予定)
※当日の受付時にお支払いいただきます
タイムスケジュール
13:00–15:00 | 併催研究イベント Part 1 道具学レクチャー「文明評論家川添登—その足跡と人物像をかたる」/参加無料 |
〈コーヒーブレイク〉 | |
15:15–16:50頃 | Part 2「前年度『道具学論集』執筆者の皆さんとの意見交換・質疑応答会(Q&A会)」/参加無料 |
18:30–20:30 | 交流会(リアル参加者のみ)/参加費 5000円の予定 |
申し込み方法
道具学レクチャー及びQ&A会
(リアル会場参加の場合・無料)
会員の方:申し込み不要です。直接会場へお越しください。(一般の方を同伴される場合や交流会へ参加される方は、申し込みフォームにてお申し込みください)
一般の方:申し込みフォームにてお申し込みください。
(オンライン参加の場合・無料)
会員の方:申し込み不要です。総会と同じ要領でご視聴ください。
一般の方:Peatixにてお申し込みください。
交流会
会員の方:事務局へメール(jimukyoku[at]douguology.jp)、もしくは申し込みフォームにてお申し込みください。
一般の方:申し込みフォームにてお申し込みください。
お申し込みの締め切りはいずれも6月13日 15:00 です。
※お申込後、やむなく参加キャンセルされる際には、なるべく早めに事務局までご一報下さい。予約人数の変更がきかない日時になってからのキャンセルの場合には、会費を徴収させていただくこともあります。予めご諒承下さい。