鳴き声をかたちにする

ジョージ・ジャンセン(Georg Jensen)のこの製品を目にしたのは、今から20年ほど前だったろうか。ヨーロッパに出張した時にどこかで目にした瞬間、私はこのかたちに釘付けになった。
これは「Quack Jug」という名称の保温ポットである。”Quack” とはデンマークでアヒルが鳴く音を意味している。デザインしたMaria Berntsenさんは、ある日公園を散歩していた時に、池を泳いでいるアヒルの自然な美しい姿にインスピレーションを得たようだ。自然は常に完璧な姿かたちを人間に投げかける。デザイナーはそれを受けて人々の暮らしに愉しさを添える。
その背景を知るとジョージ・ジャンセンの遊び心のあるかたちにもより深い意味を感じる。また、テーブルに置いてあるその姿に、つい触れながら声をかけたくなる。
ジョージ・ジャンセン社は1904年にデンマークで設立され、扱っている製品はジュエリー、ウオッチ、ホーム、ダイニング、シルバーウエア等の多種多様な製品を手掛け、シンプルで洗練された北欧デザインが特徴だ。ジョージ・ジャンセンというブランドの心根がこのQuack Jugにもしっかりと感じられる。
名称:Quack Jug (クオック ジャグ)
サイズ:高さ145mm幅150mm 奥行230mm
素材:ABS樹脂、 ポリウレタン
小野寺 純子,2025,vol.201