壁
待ち合わせの改札前では壁を背にして多くの人が誰かを待っている。背後を守りたいという欲求を顕著に感じる事ができ、動物的な本能が見えた。

しかし、多くの野生動物とは違い人間は壁を自らの手で作ることが出来る。文明初期では土や植物で壁を作り家にした。今では金属やコンクリートを始めとする様々な素材を使って壁をつくり、空間を作っている。壁は空間を仕切ってテリトリーを確保するものとして作られたという見方もすることが出来るが、もっと根源的に「背後の安全を感じたい」という欲求を満たす道具として作られたのではないかと思う。生活を豊かにする道具の原点の一つだと感じた。
壁を空間の仕切りではなく背後を守るものとして考えることで、新たな提案ができるのではないかと思った新宿駅の改札前であった。
安部 涼,2025,vol.202