縄・・・糸

植物を裂いたり叩いたりして少し柔らかくしてから、「綯う」という動作をすると縄ができる。綯うというのは、同じ方向に捻った複数の束を反対方向に撚り合わせてしっかりとした構造物にするということで、力のバランスで成り立つ編組技術の原点だ。注連縄も撚り糸も原理は同じ。日本の藁細工では掌の部分を擦り合わせるようにして綯うが、指先だけでも撚りはかけられる。写真は身近にある植物を指先で捻って作ってみたものである。文化によっては、太ももの上で転がしたり、脛を使ったりして編み袋用の糸を作っている。

植物も動物の毛も、そのままでは繊維の長さは限られているが、この作業は少しずつ継ぎ足しながら続けられるので、長さは無限に延長できる。強度も、素材の性質、束の捻り方や量や数によって調整できる。出来てくるのは線状のシンプルな道具だが、その利用の範囲は限りがない。先史時代から現代まで、それは自分の体の一部を道具にして生み出されてきた。

本間 一恵,2022.05,vol.178

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