力強い「狛寅(こまとら)阿吽像」の競演―壬寅(みずのえとら)の年頭に
東京神楽坂にある日蓮宗寺院「善国寺」の創建は1595年(文禄4年)。元来馬喰町から麹町にあったものが火災に遭いこの地に移転してきて以来、「神楽坂の毘沙門さま」として親しまれている。その本尊である「毘沙門天」は、古くからインドで信仰されてきた財宝の神(梵名: ヴァイシュラヴァナ)で、仏教では四天王の一つ「多聞天」とも呼ばれる。
その起源は用命天皇時代(587年)、聖徳太子が戦勝祈願に信貴山を訪れた時、天空の彼方に毘沙門天が出現し、必勝の秘法を授けてくれたという言い伝えによる。それが奇しくも「寅の年」「寅の月」「寅の日」「寅の刻」であり、「寅毘沙」と呼ばれることから、その宗派の本堂の左右には、狛犬ならぬ「狛寅」の阿吽像が配されている。
令和4年(2022年)の干支は壬寅、そして九星気学で五黄土星。その12年と9年の最小公倍年36年に一度巡ってくる、俗に「五黄の寅」とも称される極めて運気の強い年である。その「阿吽の気」にあやかって、隆運の到来を願うばかりである。
藤本 清春,2022.01,vol.175