中身を守り、やさしく“包む”

 このキーホルダーは、昔(20年くらい前だったか)、かつて私が勤めていた会社が業務提携をしていたフランスの化学会社を訪問した時にいただいたものです。上部に象形文字が書かれてあり、その意味として下段に、“Now a new dynasty in packaging has arrived.”(さあ、新たな包装時代の到来です。)とあります。仕事の相棒のフランス人が、どや顔で渡してきました。もらった時は、Packagingの象徴がミイラかぁ……と思ったのですが、ひょっとして含蓄深いかな、と思いだしました。ミイラづくりは、最初に包まれる中身の処理に手間と時間がかかるようです。最終的に腐敗を促進する外気を遮断する目的で布を何重にも巻いていきます。この基本技術が五千年の時を経て発展し、今や、中身はそのままで、外気の遮断により長期保存を可能にした包装技術に進化しました。共同開発していた製品は主に食品包装のためのユニークな高分子材料です。
 2018年度定時総会時に併催されたミニシンポジウム「プラスチックの道具力」でもお話ししましたが、プラスチックは常に謙虚です。ある時はガラスに学び、ある時は竹に教えてもらい、自動車材料では鉄のすばらしさを理解し、はてさて、ミイラに教えを乞うとは……実は今回初めて気づきました。

山口 登 , 2019.11 , vol.156

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