左利きのための道具

ヘルシンキの対岸、エストニアの世界遺産都市タリンの街角で小さなクラフトショップをのぞいた。商品は手作り木工品だけ。ふと手にしたヘラ、よく見ると?展示品のほとんどが左手使い用なのだ。「コレイイネ、ナゼナラバ、ボク、ギッチョ」。店のおばさん曰く、「おー、わたしのむすめ、二人とも左利きよ」。それでか。

麻丘めぐみが「わたしの彼は左きき」(’73)と歌って以来、左利き用の道具開発が進んだと言われているが、どうかな。とまれ、利き手と道具の関係論議はいまだ道なかば。弦楽器だってマメに働いているのは左手だし、右用のはさみに慣れたわが左手に、左利き用はかえってぎこちない。

10歳になる「マゴの手」が左利きと確定したらしい。われら「矯正世代」よりおおらか。よって箸もエンピツも左。ま、器用さの隔世遺伝をひそかに期待するとしようか。

写真:木製ターナーとスプーン(全長300mm)
(参考・はさみ/FISKARS LEFT-HANDED、テーブルクロス/Finlayson finland)

磯貝 恵三,2012.05,vol.086

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