華麗なる牛車の未来

道具学会探検で訪ねた内モンゴルの小都市、汽油(ガソリン)TAXIとロバTAXIが競っていた。家畜車とはオクレてる! だが10名は乗れて手荷物も積みほうだいで値も割安。速度は汽油車に敵わないが急がぬ旅の一行には充分まにあった。

そのロバ君、客のない閑(ひま)に道傍の草を食(は)んでるのをふと見て、私は魂消(たまげ)た。

汽油車の内燃機関では枯草ひと山燃焼しても幾らも進めまい。だが家畜車は一日に幾束かの枯草の消化力で、汽油車に結構迫ってるのかぁ!

自動車の内燃機関にくらべてロバ、馬、牛など家畜の消化器官のエネルギ化効率は桁違いのエコ。明日の都市内交通は家畜車に戻したらどうか。汽油車激増に窮する北京・上海でこんな提言はニベもなく一蹴、だろうが辺境小都市で戻すはカンタン。今やオクレてることはススンでること、なのだ。

いくらエコでも家畜車はダサイという勿(なか)れ。平安貴族が磨いた牛車文化、車種は唐車(からぐるま)(今いう外車)男車女車尼車、意匠(デザイン)は唐庇雨眉網代庇檳榔毛半蔀(ひさしあままゆあじろひさしびんろうげはじとみ)と型録なしには源氏物語も枕草子も読めぬ華麗なファッションを競っていた。

山口 昌伴,2009.01,vol.046

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