smile!と呼びかけるデザイン
出先で仕事することが多いので、収納力のあるペンケースが必需品だ。これを使い始めたのはもう7年前。少しくたびれてきたが、買い替える気は起きない。
使い勝手のよさもさることながら、最大の魅力は一目瞭然。机に置いていると、たちまち人目を引く。「これ何?」と問いかける人の目は笑っていて、もう手が伸びている。ファスナーの「口」が開くと真っ赤な「ノド」に呑み込まれたペンがのぞく。奇妙な形とシンプルな表情が想像力を刺激する。もう何人と、これをきっかけに会話がはじまったか知れない。こう見えてなかなか機能的で、縦にしたまま中身を出し入れできるから、カバンから出さずに使える。筆記具の先が全部見えるので選びやすい。
夫婦のデザイナーによるセルフメイド製品。原始的な生物「プラナリア」がモデルとのことだが、「進化」を続けているとかで、同じ型のものは、今は手に入らない。道具のあふれる日本だが、ユーモアと機能・構造がここまでみごとに一体化したモノとの出会いは、実は少ない。
井原 恵子,2007.10,vol.031