「ガラスの巳像」に託された「再生と成長の願い」
正月の縁起物というと「干支の置物」が有名である。十二支に象徴された、その動物ならではの運命や縁起を愛でつつ、未来への夢を託す。正月には格好の飾り物である。十二年に一回訪れる馴染みの動物の清々しさと共に、人々は新たな年を迎える。
かつて「GKデザイングループ」では、「自らが製品を開発・製造し販売する」と云う「GKショップ」を設立し、東京渋谷に開店した。当時はまだ干支のガラス商品は少なく、かつ安価な「ソーダガラス」を素材とした、シンプルでモダンな造形に挑戦した。そしてこの「巳像」を皮切りに、新たな干支を毎年一つずつ、計十二年かけて世に出したのである。今想い返すと、随分無謀な新商品開発だったと冷汗が出る。
2025年の干支は「乙巳(きのと・み)」。そこに込められたイメージは「再生と成長」「不老長寿」等など。総じて「努力を重ねて物事を安定させてゆく」等の意味が込められているという。急激に変化する今日の世界状況、そして地球の変容する有様を目の前にして、そのような時代であればこそ、新たな創造性を発揮して、安全で住みやすい世界の構築を願うばかりである。
藤本 清春,2025,vol.199