メートル法速算器

メートル法速算器は、1932 (昭和7) 年 3月1日発行の 『主婦之友』の付録であり、3枚の円形の紙を中心で留め、間に挟まれた紙が回転する仕組みになっている。「上の板を廻はして換算せんとする数をこの矢に合わせれば答えが切口に出る」「廻はせばすぐわかる便利重宝」というキャッチコピーが印刷されている。
さらに「買物便覧」と名打たれて、長さだけでなく、リットル⇔升 、グラム⇔匁 の換算が可能。「呉服、太物はメートルで」「酒、醤油、油類はリットルで」「菓子、砂糖、茶、肉、乾物、薪炭、青物などはグラムで」「白米はキログラムで」と、具体的な買物で利用できるように配慮されている。

また便利重宝と刷られた面には、「この『メートル法速算器』はメートル法助成會のご厚意により新たに作成し」たものであり、公式的なものであることが示唆されている。
1891年(明治24)に度量衡法が制定され、在来の尺貫法や、すでに普及し始めていたヤード・ポンド法がやむを得ず認められていたのが、1921年(大正10)にメートル法専用に改められた。しかし実生活では猶予期間等も設けられ、実施されたのは1959年(昭和34)だった。今日でも200mlの計量カップに1合のメモリがあり、建築の世界には尺貫法が活きている等々、メートル法の合理性が入り込めない計量文化がある。

この「メートル法速算器」に実用性があったのかどうか、極めて疑わしいが、身体検査にはメートル法が応用されるなど学校教育の現場では同法は啓発すべき事項であった。生活文化史への入り口として興味深い。

主婦之友(第十六巻第三號) 三月號附録  直径132mm 厚さ2mm

横川 公子,2022.08,vol.180

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