かかと削り?
骨董市や古道具屋は不思議なモノにあふれています。どう見ても用途が不明の珍品、何かの道具であったと思われる片割れ、カタチが面白くて、元の目的とは違う使い方が咄嗟に思い浮かぶこともあります。かつて誰かによって使いこまれ、擦り減った痕跡に推測をめぐらす時、ついそのツボにはまってしまいます。
この「かかと削り?」は三年前、京都の骨董市で入手。「これは何?」としつこく聞いてみるが、しかし店主も分からずじまい。アジアの民芸品を扱う友人は「インドあたりの古い『踵削り』やね」と即答。しかしネットでも裏付けとなる確かな情報はほかに見あたらず。当『絵はがき通信』を通じて、造詣をお持ちの道具学会の諸先輩方に教えを請うこととなりました。
躯体は高さ75×幅78×奥行60mm、重さ約450gの真鍮製。頭のてっぺんに短い角のある動物が、互いに長い鼻を絡ませており、なんとも不可解なポーズ。底面は格子状の溝が彫られ、全体が凸面で覆われています。斜めのスノコに囲まれた空洞には、5mmほどの金属粒が入っており、円を描くように回すと鈴のような音がします。さて奇妙なこの道具の正体は? みなさまの知見をお借りできればと思います。(お申し出は道具学会事務局まで)
吉岡 康正,2020.7,vol.160