ファーバーカステルのシャープペンシル

これはファーバーカステルのシャープペンシルである。芯は1.4ミリあって太いが、この書き心地がとても気に入っている。鉛筆を削った直後のそれではなく、ある程度使ったときの、あの芯の先端が丸くなってきたくらいの書き心地なのだ。梨の木の手触りや、芯を紙に押しつけてくれるような重さは申し分ない。クローム仕上げの金属に彫られた溝は機械の部品のようであり、流線型のスタイリングとともにレーモンド・ローウィの鉛筆削りを思わせるではないか。私はこのシャープペンのデザイナーを知らないが、このペンが目指しているものは、いわゆるシャープペンではないはずだ。例えば、木造客車時代の「20世紀特急」のような古き良きインダストリアルデザインではないか、という勝手な想像をさせてくれるこのシャープペンだが、大学の恩師からいただいたものである。私のつたない原稿のお礼だったのだが、届いたときはとても嬉しく、大のお気に入りなのだ。

(vol.149 石川 義宗 2018/09)

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