一目惚れ

今、ものづくりをテーマとした施設が、JR秋葉原駅―御徒町駅間の高架下にある。東京駅から2k540mに位置する「2k540 AKI-OKA ARTISAN」と呼ばれているその場所に、いろんなものづくりの店が50店舗ほど並んでいる。ふらっと立ち寄った広島のものづくり企業の出店によるカフェで、透明なストラップケースに入った小さな小さなハサミが展示販売されていた。大きさは2.5cmほどで、繁々と見ていると、店員さんが寄ってきて「これ、切れるんです」。「えっ?」と思いながら使わせてもらうことに。切れるんです、これが! 他にもミニチュアツールがあるのでお持ちしますと言われ、持ってきたのがアタッシェケース型の名刺入れ……の中に入っていた11種類のミニチュア工具。店員さんの術中にはまってしまって、食らいついてしまった。この衝動、単なるミニチュアでなく使えるところに心を揺さぶられたのか、ケース付きが気に入ったのか。決して常に使える工具でないのに。持ちたい、使ってみたい、自慢したい、という欲求で大人買い。カフェに寄ったはずなのに飲み物も飲まず、ミニチュア工具セットを手にしてお店を後にした。

小俣 邦夫,2017.05,vol.142

シェアする