初春を寿ぐ「音の万華鏡」(メルヘン・クーゲル)
古代ケルト民族の神官(ドルイド・Druid)が、その修業時に自然と一体化して深い瞑想に入る為に使用した神秘的な鈴「ドルイド・ベル」が起源とされる「メルヘン・クーゲル」。手のひらの中で転がすと、とても繊細な「シャラシャラ」と云う小さな響きを奏でる。最近は特に幼児に物語を聞かせる導入時に、又、小さな音色に耳を澄まして聴く体験に誘うなどに使用する一方、喧噪の最中に活きる現代人のストレス解消に、さらには音楽療法などと共に、お年寄りに心の癒しをもたらす道具としても効を奏していると聴く。
「お伽の球」とでも訳したらと思いつつ、今日に至る歴史を調べると、「ドルイド・ベル」は機械仕掛けのオルゴールの基となるとともに、20世紀初頭、ドイツ人の銀細工師により復元され「オルゴール・ボール」へと変容し、現在の「メルヘン・クーゲル」に至る。その球の中には正にオルゴールと同様に「櫛歯」と呼ばれる幾つかの弦が並んでおり、その上を小さな金属片が転がることで、かく微妙な音色を奏でるのである。一度聴いたら忘れられない。一度触ったらまた手に含みたくなる。そんな「メルヘン・クーゲル」。初春を寿ぐ「音の万華鏡」として、皆さんにご紹介いたしましょう。
藤本 清春,207.01,vol.138