冷蔵庫と近代的な生活の実情

現代の食生活を支える第一番の道具と云えば電気冷蔵庫であろう。冷蔵庫が普及したおかげで食材の長期保存ができるし、コールドチェーンの発達によって様々な食材が手に入り、日本の家庭では年中、即席で世界の料理が味わえるようになった。

住まいの中にある冷蔵庫は巨大な道具であり、ドア一面にはタオル掛、メモ欄、伝言板などの役目が付けられている。中を見ると新品の食品だけでなく食べ残し、作り残しの古物もある。しかも数年前の古物まで冷やしている。なかには新品で買ったまま中古となり捨てられるものや、捨てる間際の残飯袋もある。不思議なことに冷却不要の調味料、乾物も入っている。よく見ると冷やす風邪薬、座薬、時には人間ドックの検便の袋などもある。

食べるものから、下から出るものまで日本の近代生活を支える冷蔵庫には入っていた。

近代に誕生した様々な道具類に囲まれて暮らす私たちは、どうやら何ひとつ近代的な暮らしのデザインを成立させていないのである。

真島 俊一,2012.12,vol.093

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