「源氏香」のデザイン
香道は日本独特の香りを鑑賞するための営みであるが、そこでは和歌や古典文学を題材にして、数種類の香木を焚き、それらの同異を判ずる「組香」と称される鑑賞方が行われる。「源氏香」はそうした鑑賞方の一つである。亭主は5種類の異なった香木から重複を許して任意に5包選択し、順に5回香木を焚き客に示す。客はそれを聞き分け、その組み合わせを源氏香図で示す。香りの組み合わせの順番をパターン化したものが源氏香図であるが52種類のパターンとなる。源氏香ではそれら一つ一つを源氏物語の巻之二から巻之五十三の52帖に対応させている。
本品は源氏香図52パターン全てを簡単に提示する道具としてデザインされたものである。黒檀の板をルービックキューブのように回転させ、その木口に象嵌された錫のパターンを組み合わせることで任意の面に源氏香図を形成させる。回転軸は筒状になっていて内側に「香り袋」を収める構造となっており、床の間等に飾ることができる。
塚田 章,2010.08,vol.065