“ハコ”は舞台-紙芝居
「俺はプロの紙芝居師や」。サラリーマンながら一念発起、1979(昭54)年、紙芝居師免許を取得した。定年後の今は不定期ながらも紙芝居中心の生活を過ごしている。
街角の紙芝居は開演を知らせる拍子木を鳴らして近辺をひとまわり、「ハコを舞台」にセットして観客(子供)を待つ。集まるか集まらないかわからない。かつての日誌には「本日の観客、子供3人ハト10羽」と記したものだ。
私はシーンに応じて絵を引抜く4つの演出技法をつかう。のどかな田園風景などのイントロでは、ゆったりゆったり絵を引く「平抜き」。怪しい人物が潜んでいればその手前で止め、不安を煽る「止め抜き」。事態が急変した時は「早抜き」。更に激しさを表すには「ハコ」(絵)を小さく、あるいは大きく揺らして引抜く「振れ抜き」。と呼ぶ技法で子供のイメージを誘う。
今後も紙芝居は「ハコを舞台」に街角で束の間の小劇場として子供達に夢をふくらませるメディアであり続けるだろう。
近藤 ひろあき,2009.09,vol.054