「丸めがね」の主張

井上ひさし、大江健三郎、荒木経惟、みな「丸めがね」で通している。細身横長のメガネが多い現代では少数派である。少数派には主張がある。世間の風潮にはなびかない。物事にこだわりを持っている。

一方、昔はみな「丸めがね」だった。レンズは丸いからそのまま丸い枠が理に叶っている。「眼球の代用」と考えれば自然なことだ。技術の進歩は新素材を参加させ自在なメガネを登場させた。戦後の経済成長の中で、四角いアルミ枠のメガネはサラリーマンの象徴。つり上がった黒枠の細いメガネは教育奥様の象徴。もはやメガネは眼球の代用ではい。自分自身を主張する、最も重要な役割を果たすべき「眼の代用」なのである。

写真の丸いメガネは昔風である。文明に侵される前の、人間的な素朴さがにじみ出る。先に上げた丸めがね愛用者は、丸メガネで過激な自分を和らげようとしている。さらに彼らはみな三枚目であることを承知している。

写真・大正ロマン「ト」/発売元:(株)伊藤幹/製造元:サンオプチカル(株)

山田 晃三,2008.04,vol.037

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