ソルベントディスペンサー

2001年まで約15年にわたって洋書の仕入/販売に携わっていたのだが、その間ほぼ毎日のように手にしていたのが、荷解き用のオルファと、写真の(本来はペーパーセメント用の)ソルベントディスペンサーだった。

棚差しだろうが平積みだろうが、商品を店に陳列していればどうしたってじきにホコリやら手垢が付いてくる。それに海外の仕入先は日本人ほど神経質じゃないから、入荷時にすでに薄汚れていることだってある。そんなときがこのディスペンサーの出番で、底をペコンと押して中のソルベックスを脱脂綿に少量とり、ススっとかるく拭いていくのである。ものによっては端などで試してからの方がいいけれど、色落ちしそうな本は目視と手触りでなんとなくわかるものだった。

溶剤で指先を真っ白、ガサガサにしながら「化粧直し」をしていく。本来はものづくりの場で活躍する道具だが、私にとっては、人がつくったものを、それを欲しい人のところに送り出すための、大事な道具だったように思う。

小巻 由紀子,2007.07,vol.028

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