絆と招福祈願のミサンガ
3月1日、ブルガリアでは全国民が春の到来を祝ってマルテニツァ(Martenitsa)というミサンガを着ける。大抵はギフトで、家族や親しい友人に送られる。そう言って、留学生から贈られたのは紅白のミサンガで、組紐のブレスレットだった。キリスト教以前からの土俗的な習慣で、天候不順な春先の悪霊から身を守る呪いだ。すっかり春になると、流し雛のように穢れと災厄を祓うために大急ぎで取り外し、花の咲く樹木におみくじのように括る。すると、この木も1年間、健康で多くの果樹をもたらすという。
伝統的なマルテニツァは、赤と白の羊毛・綿の天然繊維製で、健康と豊穣を象徴する。最近は、グローバル化によって中国製の合繊製が出回るが、必ずしも紅白ではない。廉価だが相当な売り上げになり、高齢者福祉に役立っているそうだ。
3.11の復興と絆プロジェクトのミサンガ作りは、三陸町・越喜来の漁網工場の倉庫にあった未使用の漁網から始まった。浜の生産グループは、現在、11以上のグループに及び、物心両面にわたる復興支援の役割を果たしている。
ブレスレットは、古代日本の環のみならず有史以前のエジプトに起源があり、今も世界中に分布する。素材と意匠、着け方によって、お守り、財産、装飾、絆等々、多面的な価値を担っている。
横川 公子,2013.04,vol.96