朽ちていく道具
実った桃を入れて集荷場に運ぶための容器、一つは桃入れと呼んでいた木箱と、ほぼ同じサイズのプラスチックのコンテナ。幅630mm×奥行き454mm×高さ110mmでサイズによって入る個数は違うが、20個から22個ほど入る。便利さからいえばコンテナのほうが軽いし積みかさねが容易にできる。木箱はそれに比べると、重いし積みかさねも気をつけてやらねばならない。
しかし、どうだろうか、地元の木を使い、地元の木工所で作られた木箱は近しい関係で循環して、お互いを支えあってきた。それにプラスチックの製品はある処理をしなければ廃棄できないが、木箱はその使命をおえた後、放置しておけば朽ち果てて自然に還る。一見すると、不便なようにみえるが、とても近しい関係でその道具が自然も含めた形で循環していくことが、かつての日本の社会の形ではないかと思うと同時に、とても大事な暮らしの姿であったように思う。
里森 滋,2015.11,vol.127