山口 登

1.Analytical Instrument − 道具の気持ち

かつて、高分子学会のナノテクノロジー研究会の初代委員長として常々申していたことは「ナノテクノロジー分野の研究は、分析道具(その時は分析機器と言っていました)の発展によってナノスケールの情報が得られるようになって初めて確立されてきた」でした。道具が研究分野を創造してしまいました。

しばらく赴任していましたサウジアラビアにはKAUST(King Abdullah University of Science and Technology)という最先端分野の研究ができる大学がありまして、見学の時に高額な装置を目の当たりにしました。世界最高レベルのNMR(核磁気共鳴装置)も2台鎮座していましたが、設置当時、研究所長がこっそり「1台は設置の時に倒してしまってすぐには使えない。ところで装置はあるけどテーマがない。山口さん何かテーマはないですか?」その時のNMRの顔が今でも忘れられません。

1台は「元気なのに誰も使ってくれない」。もう1台は「自分のせいではない怪我のために使い物にならないなんて」。さて、この時の2人の道具の気持ちは?藤本さんが会員紹介に書かれていたマトリックスでは『道具生態学』でしょうか?

2.Musical Instrument − 道具とは

この文章を依頼されて、顔写真も載せるとあって、よし、ライブハウスでの演奏中の写真にしようと思ってよく見たら「顔部分をトリミング」とあり、残念。

ではサウジのKAUSTのボードミーティング用のパンフレットに載せた写真にしようと、この写真にしました。しかし、待てよ、今はひげはないな、と思って、山田さんが書かれていた『道具の定義』を見返すと、「ひとがある目的のために、手段として必要とする「もの」」とあるな。サウジで仕事をするのには確かにひげが必要だった。よし、これで行こう。


ここまで読み切れた方は道具学会会員の資格ありです。ぜひ入会されていろいろと議論しましょう。お待ちしております。

  • 株式会社ベリタス
  • 高分子学会フェロー

(2020/04)

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