大沢 匠

■ 研究・業務領域
建築家としての主な仕事は住宅、古民家再生である。特に後者は道具学会と同時期に設立された民家再生の全国組織に参加した頃から手がけるようになった領域である。文化財としての民家保存では無く、現代に生きる建築として命を与えるという民家再生の仕事は過去との対話、モノとの対話が必須である。そういう意味で道具学会の設立に参加してから多彩な分野の会員諸氏と交流できることは大きな刺激となっている。仕事を通して過去の職人の高度な技術に接することが多く、いつの日かそれを学会論文の形で表現したい。
主な作品と特徴を列記する。

浄明寺の家

□浄明寺の家:
山形県の蔵を鎌倉市に移築再生。“過去”と“現在”を蔵という箱の中に置かれた二個の箱として表現。箱を開けると中から・・・。

□中村彝アトリエ記念館:
重文「エロシェンコ像」で有名な大正期に活躍した洋画家のアトリエの再生。新宿区の設計コンペに友人と応募して当選。来年オープンする。

□パンダハウス:
名車FIAT Pandaを愛する道具学会会員の住宅。住む道具としての性能を最小限満たしながら既成概念にとらわれない形を建主と共に追求した“パンダのような”家。

結の蔵

□結の蔵:
秋田県の酒蔵を鎌倉市に移築して3軒長屋として再生。現在その一戸を事務所にしている。巨大な棟木や正面の扉の移築は貴重な経験となって現在の仕事を支えている。

■ 入会へのお誘い
道具の分野は広い森。仕事、研究、生活、遊び。人の全ての活動に欠かせない様々な道具を深く知ることはそのまま生きることの深さに通じます。ぜひ道具の森の中に一緒に入って行きませんか?きっと楽しみを見つけることでしょう。私のように。

■ 略歴
1946年東京都生まれ。日本大学理工学部建築学科を大学闘争時代に追い出されて友人と二人で事務所を始める。二年後に解散してそれぞれ就職。5年の修行を経て30歳で独立して現在に至っている。この間事務所は人生の流転と共に引越しを繰り返し、8年前から自身が手がけた元酒蔵を拠点として神奈川県鎌倉市で活動している。

(2012/06)

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