三人掛けテーブル『Monju』
これは三人掛けのテーブルである。三人寄れば文殊の知恵、「三人掛け」という言葉が市民権をもった存在感がある。
世の中にないモノ、あったらいいなというモノを作る。かつて半導体関連の研究開発等に携わっていた作家ならではの発想と技術による唯一無二の作風だ。角度が0.1°違うと寄り添わない木肌の精緻さが作品の品格をつくっている。テーブルに座る三人の関係は平等でフラットになる居心地の良さ。対面のアングルがゆるやかに示されるのも120°のなせる業なのか。変幻自在に3つの「一人掛け」テーブルに分解できる。各々の突起している三角形はワンタッチで内側に折り込まれ、視界から消える。どこまでも斬新なアイデアと仕掛け、そして丁寧で巧みな手業がとても小気味良い。
我々が今まで考え付かなかった貴重な手がかりが、作品を通じて穏やかに示されているところにこの作家の魅力がある。とりわけ『Monju』は多面的に広がるデザインの可能性を秘め、そして家具の深化を促している。
製作者:行武正剛氏 木工クリエイター Craft and Lab 代表
小野寺 純子,2022.04,vol.177