マグカップの把手(2ndステージ)
このマグカップは、10年近く前にファスト雑貨店で購入したもので、400円程度だったと記憶している。元来粗相をする質のため、何度も手を滑らして床に落としたが、見た目(価格?)によらず頑丈なつくりなのか、危機を乗り越えてきた。しかし、ついに先日、その時が来てしまった。職場でコーヒーを淹れ、把手に指を掛けた瞬間に「ピッ」という小さい音とともに、一部が外れたのだ。なんと一番力のかかる部分だけが失われてしまった。仕方がないので新しいものを探しにいくかとも思ったが、なかなかその気持ちにもなれない。ということで、現在も使用している。持ち方は一見変わらない。以前と同様に右手の人差し指を鍵型に把手のなかに入れる。しかし、掛かるところはない。そこで、人差し指の中節の内側と親指の腹で強く上部を挟み、中指の中節の側面で下部を支える。どこも欠損していないかのような素振りで、コーヒーを飲むことができる。
野田 尚稔,2020.10,vol.163