わが愛しのデザイン用具

世の中のデザインは、いまやパソコンから生まれるのがあたりまえ。けれどわれらの時代、図面描きは烏口研ぎからスタートした。色塗りは水彩、ポスカラ、パステル、マーカーと変化し、製図もT定規からドラフターへと昇格したのもつかの間、腕をふるう前に、いまは指先がデザインを紡ぎだす。

写真は長年連れ添ったわがデザインの相棒である。思いつきアイデアなどを作図するときに登板、必要にして十分という連中が生き残った。

2尺(60㎝)のT定規は壁にかけ、他はすべて乾麺の空き箱(右上)に収まる。このスリーサイズ(320×245×30㎜)は白ハンペンと呼ばれたiBook G4とほぼ同寸。時代に見捨てられたパソコンより、ひと箱分のローテク道具が、いまでもまめにはたらいてくれる。

手づくりの製図板に紙を貼り、定規と鉛筆をおいただけで、ふっと胸があつくなる。そんな昔からの友、よき伴侶なのである。

磯貝 恵三,2020.08,vol.161

シェアする