スピン

夕立が上がり、換気のために窓をあけて仕事机に向かっていると、ふと、視界の隅でなにかがチラチラするのに気がついた。目をやると、書棚に並ぶ本の背の下でえんじ色のスピン(栞ひも)が、まるでしっぽのように風に揺れていたのだった。そういえば、以前はもっと色とりどりのスピンがたくさん棚先にぶらさがっていたように思う。厚めの書籍には2本付いていることもあった。色数も本数も減ったのは、昨今、スピン付きの書籍が減っているせいだろう。

ブックマーカーには、金属やプラスチック製のものもあるが、硬いと本を傷つけることがあるし、紙の栞はうっかり落としてしまうこともある。細いリボン状に織られたスピンはやさしくしなやかで、ページを繰る手にもなじみやすい。そのため、需要そのものはいまだにあるのだろう。手芸本で紹介されている手作りブックカバーにはスピン付きのものが多いし、専用リボンもまだ手芸店などで販売されている。また、糊付きの便利商品もある。写真はMUJIの「しおりシール」。

小巻 由紀子,2017.06,vol.143

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