柄香炉(えごうろ)

「えごうろ」又は「えこうろ」と読むが聞き慣れない道具である。見ての通り香炉に柄が付けられ持ち運びを容易にしたもので、僧侶が法会の際に携行して香を献じるための仏具(僧具)の一種である。その原型は西暦700年頃、仏教と共に大陸(中国)から渡来したとされ、国内に現存する飛鳥時代造とされるものは、東京国立博物館が所蔵する法隆寺や正倉院の献納宝物その他がある。

写真上段はL字形に曲げた柄の末端に瓶形の鎮子を備えた瓶鎮(びょうちん)柄香炉又は太子型柄香炉と呼ばれ、僧侶により実際に使われていたもので火炉の中には灰と香の残香がある。

写真中段はかなり大型で重量もあり、とても携行できる代物ではない。利休の詫寂茶とは対極にあった武家や豪商の絢爛な茶席で、床に飾り香を焚いた置香炉である。金の盛上象嵌で縁起物の動植物が数多く細工されている。

写真下段は有田焼の染付で、柄香炉の形はしているが、携行できる物ではなく、用途は全く不明である。磁器の質もあまり上等ではないので、陶工の手慰程度の作品か。

小宮山 利昭,2015.02,vol.119

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