Columbia社製 白黒TV(1950年代後半)
新聞・ラジオがメディアであり娯楽だった時代に、動画と音声がライブで茶の間に届くようになったのは戦後10年も経たない、まだまだ貧しい日本だった。2年前に93歳で亡くなるまで好奇心の塊のような人だった伯父は、誰よりも早くテレビを手に入れていた。新しいモノ好きだっただけでは無く、とてもモノを大切にする人だった。このColumbia社製のテレビも驚くほど美しい状態で永く伯父の寝室にあった。映らなくなってからも奥にしまわれていたわけではなく、ずっと部屋の一部で「現役」だった。
過剰な装飾の無いキューブ状の木製外装はファニチャーとしても美しく、今の時代に十分通用する価値を見せている。ブラウン管も意外と湾曲が少なく、正面トップに硝子板が1枚入っている為にフラットな印象を与えている。全体のバランスも見事である。
時を越えて大切にされるモノというのは、たまたまその使い手がマニアや特別な人だっただけではなく、そのモノ自体に永く色あせない「力」があるからなのかもしれない。これからもそんなモノ創りを目指したい。
峯 郁郎,2014.11,vol.116