仏手と鉈豆(なたまめ)

人類創世記より「手」は特別な意味を持ち、とりわけその「掌」には、計り知れない力が宿っているようだ。「両手を合わせる合掌」「指を組み発する印」「霊力を放つお手当」、そして「伝統技芸のDNA集合」等々。宗教的な行為に留まらず、日々の暮らしにおける信頼や感謝、そして祈りや願いを表す万能の媒体でもある。

写真は、筆者がジャカルタで手に入れた木製の「仏手」。精緻な芸術性が手作りの温もりに包まれた佇まいに、心洗われる想いがする。そのしなやかに差し伸べられたかたちは、「親しき握手」や「優しき手話」など、様々な「掌」を通じた「心の触れ合い」を彷彿とさせる。人間相互の意思疎通や感情の交歓を伝えることを通じて、人類の平和と繁栄が続く永遠なる道筋を、この「仏手」は指し示しているかのようである。

そこでその掌に、親友から戴いた去年の「鉈豆」をそっとおいてみる。掌に宿る「生命の源」に導かれて、来夏の豊饒が訪れることを祈りながら。

藤本 清春,2012.03,vol.084

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