おばんざいを運ぶための箱

~家庭の中の岡持ち~

今日「岡持ち」といえば、飲食店の出前用の通い箱を思い浮かべるが、昭和の初期まで一般家庭の内部でも用いられていたようである。「岡持ち」の起原は、持ち運びに便利なように取手がつけられた桶であったと考えられ、野仕事や物見遊山の際に食品を携帯するために用いられていたようだ。

佐渡の資料館には「生活用桶・樽」に分類された漆や春慶塗が施された供膳用、贈答用岡持ちの名前がある。

本品は30×30×11cmほどの指物の上蓋式で、岡持ちの割には可愛らしく少し小ぶりに作られている。大皿なら一つ、小鉢なら二つ三つ入る程度だ。

もともとは母方の祖父が母屋から離れに食事を運ばせるために出入りの大工に作らせたものだった。高齢の祖父母にはちょうど良い大きさだったのか。盛り付けたママ運べる手軽さが嬉しい。今は徒歩3分の両親の元へ、おばんざいを持っていくのに重宝している。

谷本 尚子,2010.03,vol.059

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