ウズベキスタンの水差し
ウズベキスタンの古都、ヒヴァの市場で買い手を待つアルミ鋳物の水差しと赤いプラスチックの水差し。
彼らの先祖は銅板で造られていて今の居場所は市場ではなく骨董品屋だが、実用品としてこの形が受け継がれている。銅板叩き出しの水差しはその製法からくる制約が形を大きく左右していたと思われるが、アルミの鋳物になって形の自由度は大きく増し、プラスチックになってさらに何でもできるようになった。しかし道具は材料が変わっても、もとの形を引きずっていて、「水差しとはこういうもの」という常識からなかなか逃れることはできないという好例である。・・という結論にしようと思ってもう一度考えてみた。
これはもしかすると、水を入れて持ちやすく注ぎやすく倒れにくいという重量バランスを得るための絶妙なプロポーションであって、水の量によって変化する重心と取手の関係を考えつくした、極めて機能的な理由で受け継がれているのかもしれない。
岸本 章,2009.02,vol.047