郵便受け
月に1週間ほど利用する民家には郵便受けがなかった。大戸の隙間から差し込まれた郵便物が土間に落ちている事には気付いていたが、焚き付けになってしまう程度の物としか思っていなかった。
偶然、郵便配達の人に道端で呼び止められた。「郵便受け置いてくださいよ、汚れますから!」と一言。郵便物を運ぶ側として内容は別、投函された状態で運び届ける使命感を持って配達している。ただ投げ込まれているだけと思ってた。そう言われ、はたとラブレターを手渡す時の気持ちを思い出した。
よし、郵便物に託す気持ちをちゃんと受け止めるものを作ろうじゃないか。買った物じゃ受け止められぬと思い、早速、家の周りにある古材を物色し、手頃な材料を見つけた。汚れた板材を洗い加工、屋根材だったブリキ板を組み上げ、仕上げに柿渋を塗った。塗り重なる柿渋の色の変化とともに凄く愛着が湧いてくる郵便受け、これが私の愛のかたち。
小俣 邦夫,2008.12,vol.045