繰り返しの形

繰り返しとは埼玉県の竹籠職人から聞いた言葉で、特に使用上の制約がなければ口径と高さの寸法を1対1に作ることをいう。写真の籠は長笊と呼ばれるもので、口の直径が36cm高さが36cm、網代編み底で胴は笊目編み、縁は巻縁仕上げである。1斗笊、2斗笊とも呼ばれ、麦の播種前の消毒とともに収穫した麦その他雑穀の計量にも使われた。関東の畑作地帯で広く使われたもので胴のヒゴ幅を広く作られたものは桑摘みや、堆肥の散布に用いられた。用途の広い籠であり、この地方ではなくてはならない籠であった。

同じように桶職人は胴返しと呼んで桶や樽の口径と高さを同じに作り、高さが半分のものは半切りと呼んでいた。形を計画するときの基本として庶民の人たちは口径と高さ1対1のプロポーション感覚をもっていたのである。その比で作られたものは少し縦長に見えるが、落ち着いた形である。

坪郷 英彦,2008.09,vol.041

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