玄関のちょい掛け
玄関は人を招き入れ送り出す、家の顔のようなもの。かつて玄関は踏み石や式台など床の材質や段差を上手に活かし、挨拶を交わしたり、腰掛けて靴をゆっくり履いたり、きちんと揃えたり、たたきに水を打ったり、四季を飾り、それぞれの家に格調が感じられたもの。靴を脱いで家にあがる独特の暮らし方が生んだ美風だ。
ところが今は、“高齢者に優しく”を標榜してか、玄関から段差がなくなったことは、歩きやすくなり掃除も楽になった反面、日本が培った作法もひとつ消えてしまったよう。
“美しい暮らし”を探りたいとデザインしたのが、桜の花びら形をした黒と朱色の木製、漆塗りの「玄関のちょい掛け」。巾32㎝・奥行き20㎝・高さ20㎝と26㎝ほどの小さな椅子が、玄関のしつらいに品格をあたえ、立居振舞いを助けてくれることを願って作ったものだ。
この腰掛け、世界の漆作家が応募する「国際漆展・石川2005」で特別賞を受賞。目下、市販する事を検討中。
曽根 眞佐子,2006.05,vol.014