2024年度 道具学研究発表フォーラム(2025年2月開催)
「道具学会」は1996年、故榮久庵憲司氏を代表理事として設立されました。「道具」を研究の対象とした日本で唯一の学会です。今年の道具学研究発表フォーラム開催地は、榮久庵氏の「発意の地・広島」です。かつて彼が「道具論」の教鞭をとった広島市立大学のサテライトキャンパスを会場に開催いたします。ノーベル平和賞を受賞したこの年、ぜひ「広島開催」にご参加ください。
〔広島開催のテーマについて〕
昨年、映画「オッペンハイマー」がアカデミー賞を受賞した。原爆の父と呼ばれたひとりの理論物理学者の人間ドラマだった。原爆という兵器は、20世紀最大の発明、破壊を目的とした「究極の道具」ではないか。1945年の8月6日、世界で初めてこの道具が使用された。広島は刹那にして十数万の人間の命と、動植物、建物・乗り物、生活具たちの命が失われた。さらに放射能が長く人々を苦しめた。米国の調査団は、この町は75年間草木も生えないだろう、と本国に報告した。
呉の海軍兵学校から広島にもどった16歳の青年は、直後に見たその光景を「凄惨な無」と後述している。この原爆で妹と父を失う。何もない、凄惨な光景のなかで、何かを手にしたいと強く思った。その先に、彼は何を見、何を誓ったのだろう……。都市広島は、榮久庵憲司氏の「発意の地」である。
あれから80年が経過しました。広島の街は草木が生い茂り、緑豊かな平和な街としてよみがえりました。榮久庵氏の没後10年となる2025年の2月、私たちはふたたび「グラウンド・ゼロ」のこの地から、人と道具の現在、そしてその未来について、ともに思考する時間をもてたならば幸いです。
道具学研究フォーラム実行委員会委員長 山田晃三
記念講演
上田宗冏(うえだそうけい)茶道上田宗箇流家元
思い出は美しくなくてはなりません
榮久庵さんとの出会いは、昭和57年(1982)3月、広島県立美術館で開催された「上田宗箇ゆかりの名品展」。記念講演は榮久庵さんでした。私は、桃山時代以来の武家の茶を継承する上田家の茶に専念すべく31歳の時に広島銀行を退職。被爆により中心地が壊滅した広島の歴史、文化の再構築には原点復帰しかないと思い、始祖上田宗箇が広島城内に江戸初期に造営した上田家上屋敷の構成再現を計画しました。昭和54年(1979)に茶寮和風堂を再建、茶室遠鐘と外露地の復原に着工。展覧会はその完成記念を兼ねていました。講演後に榮久庵さんは和風堂にお越しになりました。昭和62年(1987)に日本デザイン会議が広島で開催され、榮久庵さんが議長を務められました。会議の冒頭、榮久庵議長は「広島は、被爆を乗り越え七色のプリズムの如く光を放っていかなければならない」。榮久庵さんが原爆で家族を亡くされ、被爆後の広島に住まわれた時期があったと、この時知りました。
30年の歳月を掛けて広島城内上田家上屋敷構成再現が完成し、平成25年(2013)年3月25日、榮久庵さんが再び和風堂へお越しになりました。茶室遠鐘で一服され「僕は広島というと今まで悲惨な被爆後の光景が目に浮かびました。今日からは広島と言われると再現された上田家上屋敷を思い浮かべます。思い出は美しくなければなりません」と、忘れ得ぬ一言を語られました。
略歴
1945年生まれ。広島県広島市出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、広島銀行に勤務。1995年上田宗箇流家元を継承。各地の茶室などを監修。国内のみならず海外でも講演・茶会を多数行う。2008年広島市民賞受賞。2009年中国文化賞受賞。2015年広島市被爆70周年記念事業で上田宗箇流平和公園茶会を行う。2017年文部科学大臣より地域文化功労賞受賞。
公益財団法人 上田流和風堂
https://www.ueda-soukoryu.com
基調講演
弥中敏和(やなかとしかず)GKデザイン総研広島代表取締役社長
道具を成すもの—広島の経験から
榮久庵憲司氏が見た「凄惨な無」とは何であったか。「75年間草木も生えない」と伝えられることばが指すものは・・・?
戦後80年を来年に控える今、この広島でフォーラム開催を英断された道具学会に敬意を表しつつ、当地広島ならではの話題提供ができればと思います。
略歴
1968年生まれ。九州芸術工科大学(現:九州大学)芸術工学部環境設計学科卒業。1991年株式会社デザイン総研広島入社。2013年現在に至る。一級建築士。日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)西日本ブロック長、広島デザインネットワーク副会長、建築環境系から、プロダクト系、コミュニケーションデザイン系を横断し、広島からのデザイン思考を内外に発信している。
株式会社デザイン総研広島
https://www.gk-design.co.jp/dsh
エクスカーション
広島をめぐる下記のエクスカーションを予定しています。ぜひご参加ください。
原爆ドーム・平和資料館、そして最終日は、路面電車博物館、瀬戸内海クルーズ、大和ミュージアム
1月31日(金)
●「原爆ドーム」と丹下健三氏の「平和記念資料館」見学
https://dive-hiroshima.com/feature/world-heritage-dome
フォーラム前日は、自由行動です。ぜひ見ておいていただきたいのは、原爆ドームと平和資料館。展示も素晴らしく欧米人はみな食い入るように被曝の実態を見つめています。あらためて原爆とは・・・2時間コースです。
2月2日(日)
1●広島電鉄本社「千田町車両基地」見学
フォーラムの翌朝スタート。広島は路面電車の街、広電の担当者から戦中戦後のレクチャーを受け、全国から集まった昭和のチンチン電車を見学。圧巻は80年前に被爆した「650形車両」がいまも走行可能、これをチャーターし港まで市内を走行します。
2●瀬戸内海汽船「SEA PASEO」に乗船、呉へ
https://www.gk-design.co.jp/dsh/td/seapaseo.html
GKデザインによる新型クルーズフェリーで、日本で最初の国立公園、瀬戸内海をクルーズします。平和の風をうけて呉港までの40分間の船旅です。
3●「大和ミュージアム」(呉市海事博物館)の見学
戦艦大和の1/10スケールモデル(25m)が目玉です。が、さまざまな海軍の兵器がリアル展示されています。戦争に勝つための真剣な道具たちなのに、「本物の人間魚雷」には胸が痛みます。戦争とはなんだったのか。
以上、3ヶ所をめぐり広島駅に17時到着です。
開催概要
■大会テーマ
「都市広島と道具学—道具学提唱者・榮久庵憲司の足跡をたどる」
■開催日:2025年 2月1日(土)
※前日・翌日にエキスカーションを併催。
■開催形態:リアル会場+オンライン(Zoom利用)のハイブリッド形式
■リアル会場 兼 オンライン配信会場
広島市立大学 サテライトキャンパス
セミナールーム1
広島市中区大手町4ー1ー1 大手町平和ビル9階
https://www.hiroshima-cu.ac.jp/aboutus/satellite-campus/
■主なプログラム
・記念講演 上田氏(茶道上田宗箇流家元)・・・2月1日午前
・基調講演 弥中敏和氏(GKデザイン総研広島代表取締役社長)・・・2月1日午前
・口頭研究発表 10題・・・2月1日午後
・懇親会(近隣のレストランにて)・・・2月1日夕刻
・エキスカーション・・・1月31日、2月2日
※懇親会およびエキスカーションのZoom配信はありません。
タイムテーブル
2025年1月31日(金)
●Pre-Event:エキスカーション(広島原爆資料館、原爆ドーム等)
※この日は、各自での自由見学となります〈事前申込不要〉
2月1日(土)
●研究発表フォーラム
09:30〜 リアル会場参加者 受付開始
09:50〜 オンライン参加者 Zoom入室受付開始予定
10:00〜 10:15 開会宣言(フォーラム実行委員会)、会長挨拶、テーマ解題(フォーラム実行委員会)
10:15〜 12:00 ●基調イベント
◎記念講演 上田 宗冏氏(茶道上田宗箇流家元)
「思い出は美しくなくてはなりません」
◎基調講演 弥中 敏和氏(GKデザイン総研広島代表取締役社長)
「道具を成すもの—広島の経験から」
12:00〜13:00 ランチブレイク(60分)
13:00〜 18:00 ●研究発表(発表20分 + 質疑応答5分)
①13:05〜 野田 尚稔 Naotoshi NODA(世田谷美術館)
「榮久庵憲司の『道具論』について」
②13:30〜 前田 育男 Ikuo MAEDA(マツダ株式会社エグゼクティブフェロー)
「道具と美意識」
③13:55〜 石崎 友紀 Tomoki ISHIZAKI(札幌市立大学名誉教授)
「デザインと日本語の道具学的雑感(広島言葉の魅力)」
④14:20〜 榎本 隆一 Ryuichi ENOMOTO(株式会社キボロコ代表)、
齋藤 美沙、米田 遥、三谷 篤史、高田 優、宋 燕、田中 玲生 Misa SAITO, Haruka YONETA, Atsushi MITANI et al.(札幌市立大学)
「ギリシャ発祥の手遊び文化『ペグレリ』の高齢者向け展開の試み」★
⑤14:45〜 入江 康仁 Yasuhito IRIE(慶應義塾大学環境情報学部)
「大正から昭和中期にかけての鎌倉市禅宗寺院における冠木門の流行と構造的特徴」
15:10〜15:25 コーヒーブレイク(15分)
⑥15:30〜 マツダ株式会社+広島市立大学共創ゼミチーム
「『駅』— 美しい椅子を思考する」
⑦15:55〜 鈴木 稜大 Ryodai SUZUKI(パナソニックサイクルテック)
「乗り手と自転車のコミュニケーションの再構築の試み」
⑧16:20〜 黒田 智子 Tomoko KURODA(武庫川女子大学生活環境学部生活造形学科教授)
「利水の連鎖」
⑨16:45〜 峯 郁郎 Ikuro MINE(静岡文化芸術大学名誉教授)
「ものづくりと社会的責任」
⑩17:10〜 唐澤 龍児 Ryuji KARASAWA(株式会社GKデザイン総研広島顧問)
「移動体のシート」
※ 敬称略 ★:関連展示あり
17:35〜 18:00 実行委員会よりご挨拶、翌日のエキスカーションの案内、会場片付&撤収、懇親会参加者は会場移動
18:30頃 〜 ●懇親会〈要・事前参加申込〉
会場:アル マンドリーノ(広島市中区大手町2-8-4 パークサイドビルB1F)
https://www.almandolino.com/
会費:未定
2月2日(日)
●After Event:エキスカーション〈要・事前参加申込〉
[主な行程]
09:30 広島電鉄本社前集合 → 広島電鉄にてレクチャー + 被爆電車見学
11:00〜 路面電車にて、広島港に移動 (広電のご厚意により、貸し切りとなります。運賃220円は各自負担)
11:30〜 広島港到着、シーパセオ乗船(運賃:団体料金 900円♣)
12:25〜 呉港まで シーパセオにてクルーズ
13:10〜 呉港ターミナルにて昼食
14:00〜 大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)に移動、同館見学
(観覧料:団体料金400円♣)
15:40〜 JR呉駅に移動、
16:02発JR呉線(JR 西227 系レッドウイング)で広島駅へ(運賃:510円は各自負担)
16:50〜 広島駅着後、解散
♣印の料金は、2/1のフォーラム受付時に事前徴収予定です。
参加申込方法
【A】リアル会場参加の場合
申し込み方法は二つあります。
(1)申込フォームに入力、送信
(2)本会事務局宛にEメール送信
Eメール(jimukyoku[at]douguology.jp)にて、件名を「2024年度研究発表フォーラム参加申し込み」としたうえで、期日までに、次の各項目を(同伴者がある場合には、各人につき各項目を)お知らせ下さい。
[1]氏名 & 当日の連絡先(携帯電話等)
[2]個人会員/法人会員(法人名もお書き添えください)/学生会員/一般の別
[3]懇親会(2月1日夕刻から開催)の 参加/不参加
[4]エキスカーション(2月2日)の参加/不参加
[5]その他連絡事項(遅れて到着される場合や、エキスカーションが途中までの参加となる場合、フォーラムには不参加で「懇親会 and/or エキスカーションのみ」の参加となる等々 イレギュラーなケースのご連絡)
※懇親会及び2月2日のエキスカーションに参加されるかたは予約手配(お店/団体乗船/団体入館)の都合上「申込必須」となります。必ず締切日までにお申し込みをお寄せください。
申込締切日(リアル会場参加)
2025年1月24日(日)
※ただし、懇親会/エキスカーションに参加されない(フォーラムのみの参加の)場合には、会場内にお席の余裕がある限り、「事前申込なしの当日参加」も受け付けいたします。
※参加申込後、やむなくキャンセルまたはオンライン参加に切り替えられる場合には、早めに事務局までご連絡ください。
【B】オンライン参加の場合
Peatixにてお申し込みください。
▼Peatixを通じてのお申し込みの場合
クレジットカードでのお支払いであれば「2月1日当日の朝」まで、またコンビニ払いなら「前日=1月31日」までお申し込み受付が可能です。
▼Peatixでの申し込みがうまくいかない/Peatix利用に不安がある方向けには、「事務局宛てに直接お申し込みいただき、参加費は学会口座にお振り込みいただく」形式も用意しています(原則として会員のみの対応といたします)。
※エキスカーションおよび懇親会につきましては、オンラインでのご参加はできません。
参加費
◎研究発表フォーラム(2月1日)
リアル会場参加の場合
▼個人会員・法人会員 → 1,500円〈不課税扱い〉学生会員 → 800円〈不課税扱い〉
▼一般(非会員。学生も同料金)→ 2,000円〈1,818円+消費税〉
※会場校の広島市立大学の学生さんは無料。
※いずれも、大会プログラム〈冊子〉代込み。
※参加費用は当日、会場にてお支払いください(現金のみ対応)。
オンライン参加の場合
▼個人会員・法人会員 → 1,400円〈不課税扱い〉学生会員 →700円〈不課税扱い〉
▼一般(非会員。学生も同料金)→ 2,000円〈1,818円+消費税〉
※いずれも、大会プログラム〈PDF版〉代込み。
※イベント管理サイト(Peatix)を通じてのクレジットカードもしくはコンビニ払いとなります。
◎エキスカーション(1月31日・2月2日)について
▼参加費そのものは不要です。各種入館料や昼食費、交通費は、各自にてご負担ください。
※団体料金適用予定の見学先(シーパセオ乗船、大和ミュージアム入館)については、フォーラム会場受付にて料金を事前徴収させていただく予定です。
当日の参加方法&会場でのご注意
リアル会場参加の場合
▼直接、広島市立大学サテライトキャンパス〈セミナールーム1〉にご来場ください。
※フロア内のレイアウト図は大学のサイトを参照してください。
※プログラムなどの各種資料は、当日受付で配布します。「セミナールーム1」内は飲食不可となりますので、冊子版「大会プログラム」には昼食に関するご案内も掲載する予定です。
※時節柄、各種感染症予防のため、少しでも体調のすぐれない場合には参加をご遠慮ください。
オンライン参加の場合
▼開催日までに、Peatixを通じて(あるいは事務局よりメールで)、アクセスに必要な情報(Zoom会議ID、パスコード等)と当日資料を配信します。
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参加ご検討にあたりご不明な点等ありましたら、ご遠慮なく学会事務局までお問い合わせください。
今年度も多数の皆様のご参加をお待ちします。