楽器・玩具「ラガネラ」
薄暗いガラクタ屋の奥でこの道具を手にし、グリップを振り回すとけたたましい音がした。薄板の片端が固定され、もう一方を歯車がはじく仕組みになっている。二枚の薄板は長さが少しずらしてあり音が複雑に聴こえる。
楽器か玩具か?スマホでカメラ検索してみると、この道具の原型と思われる「Raganella: ラガネラ」であることがわかった。ラガネラはクロアチアのイストリア民族学博物館所蔵の楽器でアマガエルの意味。名前の由来は音色が鳴き声に似ているからであろう。中世におけるラガネラは楽器として聖金曜日の教会で使われていたと解説されている。また高低も長短もなく、ただガラガラとノイジーな音であるが、「おもちゃの交響曲」やバレエ曲「くるみ割り人形」など由緒あるクラシック曲の演奏にも使われている。
現代では、ラチェットとも呼ばれるハンドル式のものから、写真のようなカラフルなデザインのものまで多種多様である。アマガエルの愛称で乳幼児から大人まで、玩具やカーニバル・グッズとしても世界中で親しまれている。
吉岡 康正,2021.10,vol.172