縁を絶って結ぶ道具

硝子(ガラス)の碍子(ガイシ)。この何とも不可思議な語呂が好きだ。ガイシとは、送電線同士を絶縁し、結び支える電気の生命線とも言える道具だ。

日本人は概して電柱・電線を嫌う。「外国はアンナモノがないから美しい」と羨む。どっこい、美(うま)し国フランスにも電柱や送電塔が立ち並び、電線の走る風景がある。青空に浮かぶガイシはガラス製だ。古い民家の内部で間近に見た経験のある方々もいるだろうが、日本では100%近くが白い磁器製である。同じ機能を、ヨーロッパでは多くガラスが担う。どちらもマテリアルの源流に与(くみ)している。

フランスの片田舎のありふれた風景。私は美しいと思った。ガラスと鉄は、ともに産業革命以降の主役たちだ。よし、強引にエッフェル塔とガレのガラス器のイメージに重ねてしまおう。

悲しいかな日本では、電柱=利権のコンクリ柱、送電鉄塔=鉄製怪獣にしか見えない。準備なしにモダニズムが始まった国の宿命なのか。

小巻 哲,2005.06,vol.003

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