マトリョーシカ
ロシアの伝統玩具に「マトリョーシカ」がある。このおもちゃは入れ子方式の人形で、胴体がふたのように開き、次から次へと人形が入っている。幼稚園では、手の活動を促すアクティビティ・トイにもなり、一般家庭では出窓に飾られるインテリア・トイにもなっている。しかし、デザイン、色調ともに、いかにもロシアらしいこの玩具のルーツが、箱根の郷土玩具「福禄寿」であることはあまり知られていない。
19世紀末、東京・神田につくられたニコライ堂は、箱根・塔ノ沢を避暑地に選んでおり、地元の入れ子のおもちゃ「福禄寿」を教会関係者がモスクワに持ち帰ったのではないかと言われている。
当時、モスクワ郊外に創設された芸術家のための文化センターに、この「福禄寿」が納められ、その後、地元のロクロ職人に真似て作らせたのがマトリョーシカの始まりと言われている。
モスクワ郊外のザゴールスクにある国立玩具博物館には今でも、両者が並べて展示されている。
多田 千尋,2006.07,vol.016