小道具で大道具を補う
「ご本人様は結局どれをお選びですか。」店員の語りかけにいつも戸惑う。スーツを新調する折、独身時代は亡母に随伴した。何とか私に似合うものをとの親切心から数点を選ぶが、肝腎の私の選択眼が怪しいので店員は呆れ果てる。結婚後はスーツも、ネクタイも、Yシャツも常に家内が携えている採寸書や前回の記録に基づいて、気に入りそうな品には手付金を打ってきて、後日私と行くことになる。
以来、私は自分の手で選択できるネクタイピンという小道具だけは自ら求めることにした。これならば価格や素材の吟味はまず不要だからだ。その結果、蒐集量は500点近くに達した。国内、外でその地域のシンボルらしきもの、生涯追求して止まない交通、観光に関わるものに限って求めてきた。
ここでは交通シリーズ(航空機、鉄道車輌、自動車、船舶)のうち、航空機関連のピンをご紹介する。
外出時、TPOに応じて多数の小道具の中から「この一点」を選ぶことがとても楽しい。
中村 實,2007.06,vol.026