エアブラシ
コンピュータによる映像加工技術が進んだ現代では写真修正にエアブラシを使うことはなくなりましたが、今も微妙なグラデーションの制御や立体物の塗装には必要不可欠な道具で、また模型少年にとっては何時の時代も憧れの道具です。
エアブラシは筆・ペン・鉛筆といった絵を描く道具の中でも飛び抜けて新しく、その特許は1893年にイギリスの画家チャールズ・バーディックによって取られました。しかしその写実的で躍動的な表現のために顔料を吹き付けるというアイデアの起源は、道具の近代性とは逆に、絵画の歴史の最初期まで遡ることができます。
3万5千年以上前の旧石器時代人は、顔料を自分の口や鹿の骨を加工した道具で、ちょうどエアブラシと同じように壁面に吹き付けて壁画を制作していました。
3万年以上かけて人間のアイデアがエアブラシという道具に行き着いたという、長い絵画の歴史を思わずにはいられない道具です。
田附 楠人,2008.07,vol.039