バリカン

人の頭髪を刈る道具で、櫛状の刃(歯)が2枚重ねになっている。左右の柄の握り部分には指を掛けるレバーが付いていて、握ったり、ゆるめたりしながら頭の表面を滑らせるように押し進めると、上下の刃が髪を挟んで交差して短く均一に刈り取る。第二次世界大戦中は男子児童や兵士たちのほとんどが「バリカン頭(坊主頭)」であった。1944(昭和19)年封切映画『加藤隼戦闘隊』(主演 藤田進)に、隊長がバリカンで散髪している一場面を観た記憶がある。

バリカン※は、1883(明治16)年にフランス駐在の外交官が日本に持ち帰り、それが普及し、製造会社名Bariquand et Marreがそのまま道具名になったという。

バリカンが自家用として盛んに使用されていたのは1930年代までだが、各家がみんな所有していたわけではなく、親戚や近所で使いまわしていた。一方、1910年代から村部でも理髪店が開業し、青年たちや富裕層は理髪店で調髪した。しかし戦時下では坊主頭になった。1945年以後バリカンの使用は少なくなるが、全く無くなったわけではない。写真のセットは国産品で、箱には「昭33. 6. 1求. ¥650」とある。

※英語名:hair clipper フランス語名:tondeuse
写真:バリカンセット(左上・フケ落し、左下・タワシ、中上・刃先カバー、中下・バリカン、右・外箱)

五十嵐 稔,2016.05,vol.133

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