20年目のなじむ木槌

見た目にはぼろぼろの様子の木槌。私は工房を開設した約20年前に、この木槌を自作した。市販されている木槌も手にとって振ってみたが、どことなく頼りない感じがした。たぶん、自分が使う時のバランスの位置が違ったのだと思う。

この木槌を使うのは鉋刃の出し入れの時だけ。もちろん、金属の頭部の玄翁でもできるのだが、それでは鉋の台の頭をいためてしまう。台をいためないで、使いやすい木槌が欲しかったのである。

頭部はカバ、柄はタモ。柄はそれほど固くなく、むしろタモにしては柔らかい質のところを使っている。そのおかげか、手に持ってあたりがソフトだ。頭部は鉋刃や台を叩くため、ある程度の強度がいるたので、カバがいい。

こうした作業用の道具はグローバルスタンダードではなく、個人の好みにきわめて密接な方がいいと思う。

里森 滋,2011.07,vol.076

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