ホラ貝の灰皿

道具とは、人間がある特定の目的を実現するために製作したもののことだそうだ。そこで、「人間は道具をつくる動物である」といわれる。

野生のチンパンジーが、棒や石を用いて、堅果を叩き割ることが知られている。人間が道具を製作するようになる以前にも、自然物を道具として使用することがあったはずである。自然物を利用した人類最古の道具は、ハンマーの役目をするものと、容器であったろう。

若い頃、ミクロネシアの海辺を歩いていたら、タバコが吸いたくなった。波打ちぎわに転がっていたホラ貝を灰皿にしてみたら、なかなか使い心地がよろしい。貝殻の狭間に、吸いさしのタバコを挿むこともできる。

持ち帰って、仕事机に置いて、半世紀のあいだ「人間の製作しない道具」を愛用している。

石毛 直道,2014.04,vol.109

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