青谷かごと復元品

「かご」というなんの変哲もない、かつ基本的な道具を取り上げたいのだが、あまりにも普通すぎてインパクトがない。そこで2000年ほどタイムスリップして弥生時代のかごを見てもらうことにしよう。

黒い粘土の上に張り付いているように見えるのが、鳥取県青谷上寺地遺跡から出土した本物。後ろの白いかごが2005年に私が復元したものである。東南アジア辺りで作られた安物のかごのようにも見えるが、マタタビの蔓を裂いて均等なひごを作り、細かく丁寧に編んである。

何に使ったのかはよくわからない。かごの用途は融通無碍で、何を入れなくてはならぬというものではないから、どのように使われたかを推測するのはやっかいだ。ただ、このかごが今の生活の中にあったとしても、何の違和感もないのは確かである。「編む」という技術において、新石器時代とはすでに進歩を遂げ終わっていた時代らしい。縄文時代の遺跡から出てくるかごも、たいそう見事なものなのである。

本間 一恵,2010.07,vol.064

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