レンズマウント・アダプター

テクノロジー進化の恩恵で、遺物化していたライカレンズがマウントアダプターを纏って復帰した。先ずメーカー純正品を使ってみたら誤差±1/100㎜のモノつくりなど当たり前の時代にレンズ側の無限遠ロックと合致しない。アナログ指標を無視してデジタルカメラ側でピントを合わせる設定に興醒めである。競合する他社製品を集めて使い比べ、始祖ライカのレンズ御作法を軽視した理由を探った。経年変化による個体差という止むを得ない事情を考慮してか各社で微妙に異なる設計値となっていたことが興味深い。

着せ替え遊びの後片付けをして思う。技術は最新に、文化は最古にオリジナル価値がある。ソフトウエアを弄れば殆どの問題が解決可能と幻惑させたデジタル世界への過信と過剰な経済合理性が、魅力的なモノつくりの源流を閉塞させたのではないか。

未来を担う新しい道具の創り手と使い手双方に必要なのは、技術力と文化力を積極果敢に再統合する知恵ではないか。

石崎 友紀,2012.11,vol.092

シェアする