非日常を楽しむためのハコ

―梅田の赤い観覧車―

1997年、大阪梅田に、ビルの中に組み込まれた観覧車が誕生する。「梅田になくて欲しいものは?」というアンケートに「遊園地」という答えが圧倒的に多く、この観覧車が造られることになった。ビルの隙間から顔を出す姿はそれだけで「非日常的」で、その役割は眼下に広がるパノラマ(非日常の眺望)を楽しむことであり、道路や鉄道、商店街やビルのネオンサインはパビリオンさながらであるかに思える。が、この2~3年、高層ビル乱立の中で、その「非日常的眺望」はいつまで保障されるのだろうか。

若者の街の観覧車の使命はこれだけではない。その眺望と閉ざされた小さなキャビン(ハコ)。一周15分という時間はデートにうってつけでは!

観覧車は今日もまた恋人たちのために回り続けている。

※観覧車の誕生は、1893年のシカゴでのコロンビア博覧会。日本初上陸は1906年。大阪で開催された戦捷記念博覧会、とその歴史は100年以上。以降、規模や形を変えながら遊園地やデパートの屋上にも造られた。

高橋 光広,2009.10,vol.055

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