役目の終わったハンコ

実家の物置から、埃をかぶったハンコ類が出てきた。

以前我が家は材木屋を営んでいた。物置から発掘されたのは、その時に使用していた工場の住所、電話番号を示すもの、日付印などなど。もちろん工場はもうないので住所のハンコは使えないが、加えて電話番号は市外局番を入れると6つも今より桁が少なく何の番号やらという感じだった。

その中に小さな木箱が1つ。蓋を開けると細かな棒の切れ端がいくらかと、軸のようなものが1つとピンセット。棒の切れ端に見えたのは、劣化して真っ黒になったゴムの数字ピース。差し替え式の日付印だ。近頃お世話になっている〈回転式〉が現れる前はこの〈差し換え式〉が使われていたとのこと。小さな活版印刷所のようでとても心惹かれるが、手が震えぬよう気を配りながら毎朝数字を入れ替える作業はやはり面倒だったのか。

ところで、その中にまだまだ使えそうなハンコが3つ。〈御歳暮〉〈御祝〉、そして〈至急〉。ハンコ界では込み入ったものよりも、内容が大雑把なほど寿命が長いようだ。

高橋 裕子,2008.02,vol.035

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